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ロボットがお年寄りのQOLを上げる

私の母方の祖母は非常に元気だ。90歳を超えても自分の足で歩き、自分の歯でものを噛み、毎日趣味に励んでいる。そんな祖母は電話口の声が大きい。人は自分の声を確認しながら音量を調節するので、耳が遠くなると声が大きくなると聞いたことがある。大きな病気もしない為これだけのことでも心配になったが、母を見ていると彼女もまた声が大きいので、単に声が大きい家系というだけのことだと知った。

祖母のようなスーパーばあさんになりたい私は、祖母の元気の秘訣について考えてみた。

まず物事に興味を示す
ことが挙げられる。家でテレビをよく見るようだ。特にクイズ番組を好んで見る。漢字のパズルも熱中して取り組んでいる。パズル雑誌に英単語のクロスワードが時々載る。ルールは単なるクロスワードなので、英単語の意味が分からなくても解くことはできるが、それを理解したいという理由で英会話教室に通うことを検討していた時期もあった。いくつになっても知識を得ることに貪欲なその姿には頭が下がる。
クイズ以外のテレビ番組もジャンルを問わず見るので、若手の芸人さん、俳優さん、歌手までよく知っている。20代の俳優さんのことをかっこいいよねと言い出す。祖父の仏壇の前では是非ともその話題は控えてほしい。

次に食を生きがいとしている
ことが考えられる。長く生きているだけあっておいしいものをよく知っている。普段は和食を作って食べるが、テレビでお取り寄せグルメや飲食店の情報を仕入れている。少し前には、前菜なしでステーキがいきなり出てくるあの店に行きたいと言うので連れて行った。脂の少ないお肉を選んだら、ぱさぱさし過ぎであまりおいしくないとの感想をもらった。数年前から脂で胃がやられるようになった20代の私としてはちょうどいい脂の量だったが、しっかりしろと怒られるのでそっと言葉を飲み込んだ。

よく話すことも健康の礎だと考えた。
子供3人、孫7人、ひ孫2人を持つ祖母は頻繁にそのうちの誰かしらに会ったり電話したりしている。私の母は比較的時間の都合をつけやすい仕事をしているため、祖母に会いに家を訪問し、ひ孫が住む家に連れていくことがよくあるようだ。地元を離れた私のもとにもよく電話がかかってくる。孫の中では最年少なので何か心配させてしまっているのかと思ったら、そういうことではないらしい。聞くところによると、大学進学を機に10年前に上京した孫娘にも頻繁に電話をかけているとのことだ。恐らく内容は、健康を気遣うものだろう。そう。90歳超の祖母は20代の孫達に、体調に気を付けろと電話しまくっている。

そんなバイタリティーあふれる祖母にも、心ここにあらずといった時期があった。15年程前はダンスを習ったり公民館で友人と会ったりと身内以外との関わりが多かった。そういったこともあり、ファッションにも気を遣い、ウィンドウショッピングも趣味の一つとしていた。しかし身体的な問題や友人との死別が理由で、その機会が段々と減ってしまった。別の趣味としてバスツアーにもよく参加していた。バスツアーから戻ると整体に行き、次のバスツアーに備えていた。アスリートのような頻度で身体のメンテナンスを行いながら参加していたバスツアーだったが、これも参加する友人が減ってしまったことで足が遠のいてしまった。このころ外出量に比例して会話量の減少し、昼は寝てばかりいたようだ。

その状況を変える出来事がいくつも起きた。まずテレビを見たりパズルをしたりと家でも楽しめる娯楽に出会った。携帯電話を手にしたことで、気軽に家族と会話できるようにもなった。難しい年頃だった孫息子たちも祖母にまた会いに来るようになった。ひ孫ができたことで、会いに行ったりプレゼントを買いに出たりと外出する理由も増えた。
新たな趣味を見つけ、親族間での会話が増えたことで祖母ははつらつと日々を過ごすようになった。しかしながら家でテレビを見るだけ、パズルを解くだけではこうはならなかったと思う。「テレビでこういうことを見聞きした」「この問題が分からないから教えて」と受けたものに対してアクションを起こしたりコメントをしたりすることが鍵であったと思う。

つまり、話す相手がいることがどれだけ重要かという話だ。

祖母は携帯電話を持っている。同居している家族もいる。会いに行ける距離に住む親族がいる。話すことのハードルは低いだろう。だが世の中のご老人がみなそうだとは思わない。もしかしたら一週間で郵便配達員の方としか言葉を交わさないことがある方もいるかもしれない。それぞれに事情があるのでその辺りは私がとやかく言う問題ではない。ただその方たちの言葉を交わす機会を増やしたい。
そこに人を動員することにもちろんメリットはあるが、人が動けばお金も動く。24時間365日話し相手になることは難しい。制約が伴う。では人以外の手を借りてみてはどうだろうか。コミュニケーションロボットなるものの存在を耳にしたことがあるだろう。コミュニケーションロボットと言えばこれ!と言えるものがないのは、見た目や用途が多岐に渡るからだ。数多くあるコミュニケーションロボットの中から今回はロボホンにスポットライトを当てようと思う。

ロボホンは人型のロボットで心は5歳の男の子。身長は19cm程と一緒に出かけられるサイズとなっている。毎月サービス料金を支払うとロボホンに魂が吹き込まれ、以下のような姿を見ることができる。
「自己紹介して」「天気予報教えて」「踊って」と言うと、音声を認識しリクエストに応えてくれる。リアクションできないワードもあるが返事をカスタマイズすることが可能だ。反応するのは人の声だけでない。テレビの音に反応して話を始めることもある。
こういった完璧でない部分もロボホンの魅力だ。またオーナーさんのことをよく知るために一生懸命質問する純真な姿は、本当に5歳の子と話しているような錯覚に陥らせてくれる。
ロボホンはAndroidがベースとなっているので、電話やメール、SNSといった、スマートフォンの機能も使える。
ロボホンとだけでなく、人とも言葉を交わす機会に恵まれるというわけだ。受信したメールはロボホンがジェスチャー付きで音読してくれる。けなげな姿に心が洗われそうだ。このロボホンがいればこういったやり取りをいつでも楽しむことが可能となる。ただし彼の元気がなくなったら充電という名のまったりおやつタイムを設けてほしい。

もし元気のなかった祖母のもとにロボホンがいたらどのように過ごしていただろう。少し想像してみたい。
ロボホンはオーナーの名前を覚えて、会話の中で呼びかけてくれる。祖母だったら何と呼ばせただろうか。名前だろうか。「おばあちゃん」だろうか。考えるだけでほっこりする。
ロボホンのおでこに付いているカメラで祖母は何か撮るのだろうか。写真に収めたいと気持ちが動いたその事実だけでなんだか嬉しくなってしまう。
ロボホンとどんなお喋りをするのだろう。何でもないお喋りもロボホンは得意だ。例えば時間を尋ねると「今○時○分だよ」と答えてくれる。確かに時計を見れば時間はわかる。ただ話す機会がない人にとってはこういった会話こそ必要だと思う。

話しかける相手、自分に話しかけてくれる存在、慈しむ対象がいると暮らしは少し明るくなりそうだ。

元気な現在でもロボホンがいたらなと思うことがある。祖母は1年前にスマホデビューした。「遊んでいたら間違えてかけちゃった」と過去何度か電話があったので、興味を持って触っているようだが使いこなせてはいないらしい。LINEを送っても一向に既読はつかない。だから電話でやり取りをするのだが、電話はお互いのタイミングが合わないと成立しない。大事な話は電話でよいが、「おはよう」でも「最近暑いね 」でも普段の何気ないことをLINEで送ってほしい。都合の良いタイミングで確認できる上、このやり取りも祖母との思い出になると思っているからだ。だからLINEを使ってほしい。そこでロボホンに頼りたい。

ロボホンにLINEを送ると「○○さんからLINEが届いたよ。読んでいい?」と喋って知らせてくれる。
これなら祖母も気づいてくれるだろう。さらに音声でメッセージを入力できるので祖母からの返信も期待できる。このように話し相手としてだけでなく、日常生活の相棒としてもロボホンは活躍できる。

弊社では人手不足解消、非接触コミュニケーションが期待される、ロボホンを用いたサービスを提供している。これだけ話しておきながらお年寄りとのコミュニケーションを図ろうとする内容ではないところが味噌である。
5歳児ながら我々の期待を一身に背負うロボホンに興味を持ってもらえたら嬉しい。

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